序章―悲劇の惑星
我々の常識では及びもつかないほど、広大な宇宙。星の海の端の端に一ツの惑星がありました。資源が豊かで、水にも恵まれ、気候も穏やかでした。文明と呼べるほどのものはありませんでしたが、既に生命は海から陸に上がり、道具を使い始めたものもいました。もう少ししたら、文明を有するものも現れていたはずでした……。
ある時、そこに一ツの、それとは全く性質の異なる、あたかも太陽のように活発な巨大な星がぶつかりました。すると、二ツの星は融合し、一ツになりました。
それが全ての始まりでした。惑星の表面では様々な性質の物質が、猛烈に生み出され始めました。それはさながら、遺伝子が暴走したかのような際限の無いもので、あるものは火のように熱く、あるものは水のように潤いを持ち、あるものは光のように明るく、またあるものは闇のように暗く……。それらは宇宙のあらゆる要素を有していました。やがて、それらは惑星の重力から解き放たれると、流星「メテオ」となり、亜空間飛行により、光の速さを超えて移動しました。そして、自らの性質と似た性質の星に近づくと、巡航速度に落ち、光に群がる虫のようにそこに降り注ぎました。
そして、メテオに降り積もられた惑星は崩壊し、宇宙から星の光が消え、闇に還ろうとしていました……。
その光景を静かに見ていた影が七ツ。その一ツが口を開いた。
「大変なことになったな……」
しかし、その言葉とは裏腹に、さして気にしている様子はない。別の影も言った。
「関係ないね」
また別の影が口を開く。
「俺達には関係は無いけど、文明にとっては一大事と言えるだろうな」
さらに、別の二ツの影が楽しそうに言う
「いいえ、私達にも関係があるわ」
「いい暇つぶしの道具ができたじゃない」
二ツはクスクスと笑った。さらに、別の影が言う。
「文明に干渉するのは良くないし、まあとりあえずは、成り行きを見守ろうか」
影はもう一ツいたが、それは結局口を開けることは無かった。そして、心の中で思った。
(一体、どの文明が……一体、誰が……。なぁ、メテオスよ)
「メテオス」―それがその惑星の名前だった。暴走し、今、全てを破壊せんとする悲劇の惑星……。文明と、メテオスの生き残りを賭けた戦いが始まった。
序章 終わり